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ひじかたおめでとう!




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煙草が切れたから買いに出た。

途中団子屋があったから、ついでに休憩でもしようかと思った。
それで座って茶を飲んでたはずだ。
ただそれだけなのに、いつの間にか何故か団子屋で天パの無職と席を共にしている。
どんな状況だっての。
今日に限ってこいつと会うだなんて。
どうせこいつは今日が何の日かなんて知らないんだろうが、それでも此方としては非常気まずい。
 
実は、俺は何をぶっ飛んだか、横にいるこいつのことが気になっていたりする。
いや、気になるってもんじゃねぇ。
かなり前から・・・・そ、その・・・情を抱いていたりしている。
勿論親愛とか友愛で納まるようなものではなくて。そんな簡単なものならここまで悩んだりしてねぇェし。
かといって、俺は男、こいつも男。
その上、普段いがみ合ってばっかだから勿論今更言えるはずもなく。
最近では、漸く刀を抜くこともなく話をできるまでにはなったが、気づいた時にはもう諦めなければいけない感情だった。
育ててはいけないのに、飼い主の気持ちを無視してどんどん胸の中で巣食っていく。
自分のこの性格上、確実に想いを伝える事なんて無理だ。寧ろ言うつもりも甚だない。

そんな複雑な中、こんな日に、こいつと仲良く相席するという状況がまず俺の中じゃありえないことで。
今日こいつと時間を過ごすという事は、今日が俺の中で特別な日になってしまう。
そんな時間なんていらない。
美しい思い出なんていらないのに。
それでも、心の隅で会えた事を嬉しく思ってしまう気持ちを否定できない自分がいた。
悔しいことにあいつの前じゃあ女々しい思いを抱えてしまう。
 
くさくさした気分を吹き飛ばそうと上を見た。太陽がまぶしい。
すっかり季節は春へと変化していた。
ふんわりとした寒くもなく暑すぎもしない風が心地よく頬を撫でていった。
相変わらず、この日は毎年嫌ってくらい晴天になる。
たまには雨でも降ってくれりゃぁこの複雑な気も紛れるというのに。
空気の読めない太陽は放っておくとして。
わざわざ隣に座りやがった癖に黙りきっている奴に、俺はぼそっと問いかけた。
 
「なんか用か。」

「いんやー。いい天気だな、ってな。オヤジー。緑茶とみたらし6本ね」

ぐぐっと背伸びし、ぼりぼりともっさり頭を掻く。
こっちの気もしらねぇでいい気なもんだ。

「にやにや笑いやがって・・・気持ち悪ィ。何企んでやがる。」

「ひっでーの。俺だってたまにはお天道様の下でのーんびり寛ぐもんですよ。」

「そんなもんいつものことだろうが。そうじゃなくてだな」

「何よ。」

「・・・・・・・・・別に。」

「お前・・ホントそれ口癖な。エリカ様再来ってか。」

「誰がエリカ様だ。俺は副長様だボケ。」

「へいへい。じゃあ副長様はぁ~何でそんなに機嫌悪いんですか~。」

「わるくねぇ。」

・・・心の中を読み取られてしまったようでとても心もとない。
どうしてこいつは人の機微を悉く察知しやがるんだろうか。
こいつの傍にいるといつも丸裸になった気分になってしまう。キタネェ天然パーマのくせに。
触れないでいてくれたらいいのに。だからテメェはデリカシーがねェって言われんだよ。

「ムスッとしちゃって。ま、大体想像つくけどな」

「てめぇに何がわかるってんだよ」

「お前のことだもんよ。大方、何か思うことがあって屯所に居づらくなっちまったんだろ」

「・・・・」

その通りだクソッタレ。
嫌ってくらいこの日になると真選組総出で宴会を開く。勿論誕生会なんぞという可愛らしいもんでもなく、奴らにしては単に飲んで好きに騒げる口実が欲しいだけなのだろう。
ぞれでも、わざわざこの日に開いてくれることをどうしてだなんて、分からないほど馬鹿でもない。
毎度、此方が何かを言う前におめでとうの言葉とともに祝ってくれるから、今更過ぎて最早ありがとうの一つも言えなくなってしまった。
あいつ等の前で訪れる今日を、どんな顔で過ごしていたのか毎年のことなのに忘れてしまう。

「副長様は愛されてんのねぇ~。今日は家族のものってか。」

ぽつりと零した奴を見たとき、ぼーっとした表情の中に一瞬何かが垣間見えた気がした。
くちゃくちゃと団子を噛み締めながらくるくる串を回す。
いつの間に5本も平らげてんだこいつ。

「あ?」

「いんや。何でもねぇ。よっこらせっとォ」

今何か大切なことを聞いた気がするのに、まだ残っている団子を全部食べずに腰を上げるこいつが珍しくてそちらに気がいってしまった。

「オヤジ~ゴチそーさん」

「お前、」

「それやんよ」

「やるって一本しか残ってねェぞ」

「一本でもいいでしょー。またとない銀さんの奢りよ奢り。しっかり味わっとけよ」

「奢りったって、どうせまたツケなんだろーが」

「あら?バレた?」

「そんなもんでふんぞり返ってるとか、馬鹿みてぇだなオイ」

「奢ってやったのに何この敗北感んん!!??・・・・まぁいいけどな。んじゃぁよ」

こいつが隣にいたことで馬鹿みたいに消費の早かった煙草だが、手持ちぶたさにまた新しい一本に火をつけようとライターを探っていたら、ふっと影が顔を覆った。

「な、に・・」

上を向いた途端に触れた熱。
咥えていたまだ火のついてない煙草はいつの間にか奴の手の中で。
一瞬重なった唇がほんのり熱い。

「・・・今年はあいつ等に譲ってやるけどさ。来年は開けとけよ?こどもの日が誕生日の土方くん」

「・・・・・。な・・・っ!」

まるで耳元にキスをするかのような近さで囁かれた声は、団子を食べただけじゃない甘さが滲んでいて。
我に返って、バッ、と耳を押さえて奴の方を見たけれど、既に人ごみに紛れており。
見えたのは白い着流しともっさりした銀髪の後ろ姿だけだった。
 
「・・・・ここをどこだと思ってやがんだあの糞野郎・・・」
 
ぽつりと呟きながら熱い熱を冷ますように顔を振る。
往来でキスをされたとか、非常識だとか、どうしてこいつが知りもしない俺の誕生日を知っているんだとか、そういった前に考えてしまうさっきの言葉。
袖で拭ってしまいたいと思ったのに、指先は思いとは別に、そっと唇をなぞる。
知られていないと思ってたのに、まさか今日が何の日かまで。
投げかけられた言葉を自分の都合のいいように解釈するにはまだ臆病な自分だった。
けれど。

「くせぇんだよばか・・」

ときめいたなんて嘘だと思いたい。
それでも、ドクドクとうるさい心臓に嘘はつけない。
いつもは死んだ目をしてるくせに、時たま垣間見える雄臭い雰囲気。
きっと今の自分は耳まで真っ赤になってるに違いねぇ。
情けなくて、悔しすぎる。

(冷静ぶってみたがうまく取り繕えているだろうか)

取り敢えず、総悟に見つからないよう火照った顔を冷ましてから帰ろうと、そう思った。








 
 
2011.5.5 HAPPY BIRTHDAY
 
リサーチ済ですよ坂田さんは。
坂田も坂田で土方の隣に座るまで葛藤して、臭いこと言っちまったと恥ずかしがってればいいです。そんな二人が愛しいです。
来年はと言っておきながら、夜抜け出してきた土方とまたばったり会うんだよ。
そんな銀土クオリティ。

 

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