俺のルールだ。
銀誕小説 「不器用な大人たちの愛し合い方 後編」
昨日の続きです。
さてさてどうなるのやら^q^
一応コレで終わりとなってますが、続きのGH側でもかけたらいいなと思ってます。
下からどうぞ~。
真選組とは逆方向にある公園のベンチに一人でぽつねんと彼は座っていた。
咥え煙草から煙を燻らせている。
そうだ、気を紛らわすにも彼には煙草があったのか。
だけど全くもって上の空のようなあの顔じゃあ、気分転換なんて全くできてないんだろう。
折角探しに来たのに手ぶらで帰る訳には行かないの。
この大きな素直じゃないプレゼントを、これまた素直じゃない天パに届けるまでは。
そっと歩いていき、ベンチにドサッと腰を下ろす。
こんなにいい天気なのに、何でこの二人の周りだけは曇ってるんだろう。
「チャイナ、か」
「私の名前は「神楽」っていつも言ってるアルよ、ニコ中」
ふっと、隣で笑ったような気配。
「以前」の呼び名で呼んでみたら何となくちょっとだけ、雰囲気が優しくなった気がする。
ヤンキーぶって、横柄な態度とってる癖して、一度懐に入れたものにはとことん甘くて優しい。
トシちゃんはとってもとっても甘えさせるのが上手いと思う。
どろどろの甘い甘い世界で包んで護ってくれる。
銀ちゃんとは違う優しさ。
私が「子ども」らしく居られる理由もトシちゃんのおかげなのだ。
あの時の言葉があるから。
だから、私は庇護の下で子ども子どもしていられる。
他人には甘やかしすぎて、その分自分にはとことん厳しいトシちゃん。
ちょっとくらい息吐いたっていいのに。
そんな煙でごまかさないで。
その息を吐ける場所を私は知っている。
「ばぁーか、お前だってあだ名で呼んでんじゃねぇか」
「ふふ、お返しネ」
「どうした。朝飯まだだろ?」
「うん。・・・ね、トシちゃん」
「・・ん?何だ?」
「銀ちゃんと、喧嘩、したアルか?」
「・・・・聞いてたのか」
「盗み聞きなんて野暮なことはしないアル。たまたま膀胱が張り詰めてSOS出したから吐き出しに行った途中でたまたまアルヨ」
「おま、仮にも女なんだからんな下ネタやめとけ、総悟が泣くぞ」
何であの野郎が出てくるネ。
あんな奴にどう思われたっていい。からかわれるネタが出来るのは癪に障るが。
そんなことより、今はこの目の前の大人の殻をかぶったこどもだ。
「トシちゃん、前に私に『我慢するな』って言ってくれたの、覚えてるアルか?」
「・・・・・・・、あぁ。そういや、そんなことも言ったな。大分前だったか」
「うん、二人が付き合ってるって聞いた時アルよ」
「あの頃のお前、すんげぇ態度だったもんな」
「しょうがないネ、トシちゃんの今までの印象が印象だったからヨ」
「まぁ、それはしゃぁねえわな。なんにしろ、今まで敵対視してたチンピラ警察だもんなぁ」
「まぁ、このマダオにしてこのチンピラアルか、ある意味お似合いネ、と思ったけどな」
「くくっ・・・ひでぇなオイ」
「でも」
思い出し笑いをしつつも遠くを見るその視線が、今誰を思い描いているのかすぐに見て取れる。
目を閉じて頭に浮かべているのは誰なのか。
(・・・トシちゃん「ムボービ」過ぎヨ。)
ツンとした仮面の下にそんな可愛い顔を隠してたなんて。
送り狼になっちゃいそうアル。あ、迎え狼か。
「こんなに他人に優しくてこんなに自分に意地悪な人初めてだなぁって思ったアル」
「神、楽・・?」
「こんなに一杯我慢して、強がってるくせに、自分でいいのかってビクビクしてる人初めてだったアルヨ」
そう。
隣で目をまん丸にさせてるこの人が暫くしてとてもとても優しい人だと知った。
ソファーで眠っちゃった時もそっと布団をかけてくれる。
熱が出たときは、次の日朝が早かったのに朝までずっと傍にいてくれた。
汗でべとべとの手だってずっと離さず握っててくれた。
煙草だって絶対私や新八が傍にいたら吸わない。
今だって片手にあった白い毒物は消えている。
そして、あの日も。
あの雨の日の、
あの銀ちゃんを、
あの光景を、
その目にしても、ずっと抱きしめてあげていた。
何にも言わずにそっと背中を撫でてあげていた。
そんな優しい人が―
どんな時でも自分に自信が持てない。
いくら好きって言ったって、信じる前に疑ってしまう。
自分で釣りあってるのかってずっと不安になってる。
ぐるぐる考えてしまう。
誰も何も言っていないのに悪い悪い方向にすぐに考えてしまう。
きっとそれがこの男の性分なのだろうけれど。
でも。
「だから、あんなこと言ったアルか」
「あんなこと、って・・・」
「だから自分が女々しいって言われて怒ったアルか」
「違、っ、・・・」
「図星だったアルか?いつも銀ちゃんのこと考えてるの私知ってるネ。」
「・・・・ばっ」
ほら、まっかっか。
「トシちゃん案外顔に出るタイプヨ」
「お前なぁ・・・」
くしゃりと前髪から覗く視線が泳いでる。
かぶき町の女王のこの神楽に嘘はつけないあるヨ。
「顔に出ても、言葉で出せないなら意味ネェけどな・・」
「素直に謝ってるトシちゃんは気持ち悪いアル」
「確かに」
「だから行動で示せばいいネ。」
「行動で、って・・・・」
「トシちゃんは、女扱いが嫌だったのカ?」
「いや、女扱いというか、俺が顔怪我したらアイツが切れやがってよ」
「顔?」
「あぁ、ほら、ここだ」
「ん~」
髪の毛をかき上げ、つるりとした綺麗なおでこをむき出しにしたトシちゃん。
あ、あった。
前髪の生え際。こんな所一見すると、全く分からない。
どこまであの天パは顔を近づけたんだろうか。
(ちゅーでもしたアルか・・・)
まだうっすら血が滲んでる。
「・・・大丈夫アルか?」
「あぁ、全く何ともねぇ。こんなちっせぇ、怪我でも何でも無いような傷でわーわーわめきやがって」
「・・・どうせアイツァ、面だけにしか興味ねぇんだろうよ」
ぽつりと呟くトシちゃんの横顔がさっきの銀ちゃんとダブって見えた。
くしゃりと眉間に寄せられた眉の一方で、口元を無理矢理吊り上げる姿が痛々しい。
ああ私までくるしいなぁ。
きゅーーーって胸が痛くてたまらない。
そんなこと無いのに。
そんな所で私たちは貴方を見ては居ないのに。
*****
僕は不思議に思いながらも、フライパンを温めている間にテーブルの上を拭いて置こうと思い居間に向かった。
あれ?机の上に何かある。
(灰皿、って・・・)
「吸殻がある・・・土方さん、来てたのかな?まだ新しいし・・」
万事屋で煙草を吸うのは土方さんくらいだ。
「銀さん、もしかしてさっき土方さん来てたんですか?」
「うっせーな、あんなニコチン馬鹿のこと俺が知るかよ」
(ははぁ、もしかして土方さんとまた喧嘩したんだな)
「銀さんまた土方さんと喧嘩したんですか?ほんとあんたら懲りないですね」
「俺は悪くねぇし。寧ろ喧嘩売ってきたのはあっちだしぃ~?」
「どうせまた銀さんが下らないこととか気に障るようなこと言い出したんでしょ」
「ざけんじゃねぇぞってんだ。俺は唯な、アイツの心配をしただけだっての。なのによ・・・・、変に勘繰りやがるにも程があるぞ。どんな思考回路してんだ」
「・・心、配・・?まさか・・・土方さんに、土方さんに何かあったんですか?」
「いや、そんな大怪我とか負ったわけじゃねぇ。昨日、予定外の物取りがあったらしくてよ、んでちょっと額の所を掠っただけだ」
「そうですか、よかった・・・・縫ったりとかそんなんじゃないんですね」
「あぁ。でも・・・」
「でも・・?」
「あんな所傷つけてよ、一歩間違えれば大怪我だの失明だのありえる所だったんだぜ」
「まあ、そうですよね」
「またアイツ無茶して飛び込みやがってよ、たまには部下信頼して後ろで待ってろってんだ」
(・・ん?)
「でも・・それは仕方ないんじゃないですかね、副長っていう立場の人なんだし。そりゃ心配ですけど・・」
「でもよぉ、作らなくていい傷無駄につくって、もし痕が残っちまったら」
「ちょ、ちょっと待って下さい!・・・銀さん、もしかしてそのこと土方さんに言ったんですか?」
「んなもん当たり前だろーが。怪我作ってんだし、その度にこっちはひやひやしてんだよ。忠告しとかねぇとアイツまた無茶やるじゃねぇか」
ああそうか。
コレがきっと喧嘩の原因なのだ。
銀さんの言いたいことは分かる、僕だって、土方さんが怪我してたら心配だってする。
でも・・・・
「銀さん、それじゃあ土方さんの気持ち全く考えてないですよ」
「ああ?何でそうなんだよ、お前俺の気持ち疑ってんのか」
ああ、全くこの人は分かっていない。
土方さんという人を。
土方さんという性格を。
「土方さんは、男です」
「んなもん見りゃ分かるわ。どっからどう見てもガタイのいい男だろうが、ちんこだって付いてんだし」
「そうですね。別になよなよもしてないし、中性的ってわけでもないし、どこから見てもれっきとしたカッコいい男の人です、誰かさんと違って」
「オイ、最後の余計なんですけど、いらないんですけど」
「だけど、男なら。男なら、傷ができたことを気にされたくないんじゃないでしょうか。いや違うな、きっと心配されたことで怒ってるんじゃないのかも」
「・・・・・」
「その傷を理由に、男としての矜持を奪われるのは別なんじゃないですか」
「どういう意味だよ・・」
「土方さんは子どもじゃありません。ましてやか弱い女性でもない、れっきとした男性です」
「当たり前だ」
「こうやって付き合いだして、銀さんと、その・・・ゴホッ。・・・か、身体を、重ねたりも、してますよね」
「そりゃぁな、お互いこんな年で、仲良くプラトニックなお付き合いって訳でもねえよ」
「じゃあ男として受身になるのって凄く辛いし怖いと思うんですよ、僕。身体を全て差し出して、相手に委ねるっていうことは。でも土方さんは銀さんを受け入れた」
「・・・・・・ああ」
「なら、そういったことでは受身になったとしても、土方さんとしては、それ以外は今まで以上に銀さんと対等でいたいと思ったんじゃないですか」
「・・・。」
「プライドが高い土方さんならきっと「対等」であるとすること自体が、これから銀さんと身体の関係を続けて行く上での譲れない部分だったんじゃないでしょうか」
「・・・対等・・か・・・・」
「それに、顔に傷を作るなだのって、それじゃあまるで容姿だけで土方さんを好きになったみたいに聞えます。容姿が良過ぎるときっと色々勘繰りたくなるのかもしれないですけど・・」
「オイ、馬鹿にするなよ?俺はそんなつもりはねえ。アイツをそんなちんけなもんだけで評価したことなんて一度もねェよ」
(うわぁ・・・・珍しく真剣な表情・・)
だよね、銀さんはそういうところで判断する人じゃない。
人柄とか、信念とか、その人を取り巻く、その人を構成する全てを見て考えている人だ。
「すみません。・・・わかってます、銀さんがそういうつもりが全く無いのは、分かってるんです・・。でも・・」
「・・・・」
「でも、そういう風に、勘違いしてしまうこともあるんじゃないんでしょうか」
「容姿がいいだけじゃなくて、唯でさえ、性行為の時は女の人役ってなると、きっと土方さんとしてはどこか、不安に思うこともあったのかもしれないです・・・」
あの人のことだから、きっとそういう気持ちを持った自分を逆に責めたはずだよね。
女々しいんじゃないかって。
人一倍男らしくありたいって思うあの人なら。
でもそれだけ銀さんのことが・・・・。
「口に出しては言わないんだろうって思います。土方さんは自分で自分を、強くなければ駄目だと決めつけてるから。自分は「鬼の副長」なんだという肩書きで戒めてるから」
「あいつ、ホント意地っ張りだからな・・・」
(それは銀さんもだと思うんだけど・・・)
心の中でそう思いつつも口には出さず、言葉を続けた。
「でも本当は弱い所だって持ち合わせてる。」
「・・・アイツはとんでもなく優しいんだよ・・・・そのくせ自分には厳しすぎる。だから」
「だから戦場では指示だけを取って自分だけ安全な所でいろって?あの人の戦う理由を奪うんですか」
「そういう意味じゃねえ、ただ俺はアイツに自分をもっと大切にしてもらいてぇだけなんだよ・・・。傷が付いてることが問題なんじゃねえ、それだけ大事なんだっての」
何かここまで銀さんの本音を聞いたのって初めてな気がする。
無意識に言ってるのかな?
目と眉も近くなっちゃってるし。
いつも飄々として何考えてるのかわかんないから・・。
ちゃんと土方さんのことを考えてることはわかったけど。
「それをちゃんと、口にして土方さんに言ってあげたんですか?」
全く、そのくらいストレートに言えばいいのにこの朴念仁が。
肝心な所でヘタレなのだ。
変な言葉で気持ち覆い隠して。
見えづらいったらない。
しかも微妙にモジモジして気持ち悪いったらありゃしないし。
普段の姿を思い出し比べてみると、余計に薄ら寒くなった。うわぁ・・・。
「・・・・。・・・いや、言ってねえ、つーかアイツと面と面向かって、言えるわけねえし。んなこっぱずかしいこと」
「・・・僕の前では言ってますけどね」
「ほらあれだっつーの、眼鏡だからね、フレーム目の前にして、独り言とか別に誰も何も思わないじゃん?恥ずかしいとか思わないじゃん?」
「いい加減眼鏡ネタは辞めろやあああ!っていうか僕眼鏡のレンズですらないの!?」
くっそ、いちいち腹が立つんだけど、この天パ。
このまま見捨ててやりたい所だが、それじゃあ土方さんが可哀想だし。
イマイチどこか深刻にはなりきらないけれど、これで僕の言いたいことは分かってもらえたはず、だと思う・・・。
こういう恥ずかしいの苦手なんだよね、僕。
しかも全部憶測だから本当かは分からないけれど・・・・でも、二人がすれ違っているのは本当で。
このままじゃ駄目な事もわかりきっている。
「銀さん、言葉選んでちゃ、本当の気持ちなんて何にも伝わらないですよ」
「くっそ、新八の癖に生言いやがって」
「はいはい。取り敢えず今の銀さんが言った一つ一つの言葉、それ全部土方さんに言ってあげて下さいね」
「いや無理無理無理無理無理!だって普段喧嘩ばっかりだからね、銀さん意外とシャイで初心な奴だからね」
「普段から下ネタオンパレードの人のどこがシャイですか。そうじゃないと、このままだといつまでも土方さんは自分に自信がないままだし、銀さんの本当の気持ちを知らないままですよ。というわけで、似非シャイは似非シャイなりに頑張って下さい」
「シャイだけどポークビッツじゃねぇぞ俺」
「誰もんなこと聞いてないです。つーかアンタのちんこなんて興味ないです」
「キャー!お妙、新ちゃんがちんこなんて言ったわよ!キャーッ!」
女子高生の休み時間くらいうざいテンションだが、だんだんいつもの銀さんに戻ってきたようだ。
最後に一個だけ言わせてもらおうっと。
「ぎくしゃくした痴話喧嘩なんて見ててつまらないですからね」
「・・・・なっ、痴話喧嘩っておまえ・・・俺らそれじゃあただの、バカップルじゃねえかよ・・・」
「ああ、今頃気づいたんですか(にっこり)」
「ああ、新八がどんどんたくましくなっていく・・・」
「そりゃあこんな所にいるくらいですからね、其れくらいやってかないとぺろっと喰われちゃうんで」
「やだ、やめて!銀さん、フレームと付き合う趣味なんて無いんだからねっ!」
「ちっげーよキャラ的にだわキャラ的に!てかレンズに昇格してくれたって良くないですかアアアア!?断じて眼鏡単体でもないけども!思いっきり人間だけども!」
「つっこみ長すぎてウゼェよ、読んでる人イラッとしてるよ」
「読んでる人って何!?」
「ま、今回は一応助けられた、ってか?・・・ありがとよ、コンタクト」
「眼鏡だァァァアア!じゃねぇ、新八だボケェェェェ!!!!」
この人の自由奔放なハイローテンションにつっこめるのは僕と土方さんくらいしか居ないんだろうなとふと思った。
これじゃあ大変だあの人も、・・銀さんも。
お互いに言いたい事を言い合えないなんて。
素直じゃないというか、もっとお互い「言葉で伝える」っていう甘えをもってもいいのにと思う。
かっこ悪いとか思わないんだけどなぁ。
逆に自分の本音を隠してしまう方が勿体無いんじゃないのかな。
寡黙でいることが全てじゃない。
まぁ、僕は結局は子どもだから。いい歳した爛れた大人の恋愛なんて知らないし。
彼らには彼らの、大人には大人の恋愛の形があるんだろう。
だからと言って、こっちまで引っ掻き回されたらいい迷惑だけどね。
「あんなに弱くて優しい人初めてですよ。凛として、一見隙が無さそうに見えるのに、意外と見ててどっかあぶなっかしいというか、支えたくなっちゃう時ありますもんね」
「まったくだっての。でもそれがアイツだしな」
「銀さん、うかうかしてると横から僕みたいな眼鏡野郎に掻っ攫われても知りませんからね」
(あれ?何で僕、こんな言葉出たんだろ)
そんなこと言うつもりは全く無かったんだけど。
どうしてだろう。
確かに土方さんは、魅力的だけど、でも男としてだし、一応銀さんと付き合ってるし、僕はお通ちゃんが好きなのに。
これじゃあ僕が土方さんに好意を持ってるみたいな・・いや、持ってるけどそういう意味じゃなくって!
何でだァアア、と自問自答してる僕を他所に自信満々の声。
「ああ?心配してねーよ」
「俺がんなことさせるかってェの」
そういって、にやりと笑ったこの駄目人間は、片手を挙げながらぶらりと玄関へ向かっていった。
さっきは捨てられそうだと怯えた目をしてたのにね。
現金というか何と言うか。
今から土方さんを迎えに行くのだろう。
「あ」
(そうだ・・・もしかして神楽ちゃんも?)
「ふふ」
だからあんなに必死に走っていったのか、とすんなり納得がいった。
早く仲直りしてもらいたいのは一緒なんだよね。
神楽ちゃんは土方さんのこと大好きだから。同じくらい銀さんの事も。
今日はどうだろう。
どうせ銀さん土方さんを万事屋に連れ込んでそのまま・・・、なんだろうなぁ~
あのえろ親父め・・・。思春期の子どもが居る家で、あんなこと!
でも僕は空気の読めるいい子だから。家は開けてあげます。つーか見たくないし。
ケーキとか材料買いに行く途中で神楽ちゃんを探してもいいなぁ。
取り敢えず、せめて夕方までには、土方さんを解放してあげてくださいね、銀さん。
で、その後は4人であの天パの生誕を皮肉ってやるんだ。
また30歳に一つ近づいておめでとう銀さん、ってね。
これだけ僕が口を挟んであげたんだから、それくらい言わせて貰わなきゃ割に合わない。
「これじゃ、銀さん朝ごはんはいらなさそ、ん?何か臭・・、あああああああああフライパンンンン!!!!!」
取り敢えず買出しに出るのは、真っ黒に焦げたフライパンとこの臭いをどうにかしてからになりそうだ。
*************
「今日、何の日か知ってるアルか?」
「今日、は・・・・別に・・特に何もねぇだろ」
「そんな顔してるから、「もう知ってる」ってこともお見通しヨ」
「う・・・」
「わかってるアル」
素直になりたいのになれないことも。
だって昔の私とおんなじだったから。
「ごめんなさい言えなくてもいいネ。もっかい好きだって言ってあげたらいいのに」
「・・・んなもん言えるか。あんなの二度とゴメンだ」
「どうして言えないアルか、やっぱり恥ずかしいのカ?」
「恥ずかしい、てぇのもあるが、きっと・・・自信がねぇんだろうな」
「自信?」
「まぁ今回の原因もそうだが、多分俺はどこかでアイツを疑っちまうんだと思う」
「それはきっと、あいつの所為じゃなくて、自分が・・・・・」
そこまで口にした後、一呼吸おいたと思ったら。
唇をかみ締め苦々しそうな表情をし、
「いや、何でもねえ。」
そう一言いってまた黙ってしまった。
切なそうに、でもじっと地面を睨みつけている。
また隠すアルか。
往生際が悪いったらありゃしない。
臆病な人間。
大人になったら何でも隠さなきゃいけないの?
自分の気持ちに蓋をするのがいいの?
「こんなことお前が聞く様な事じゃねぇさ。心配すんな」
「トシちゃん・・・」
「ほら、もう帰ん、」
「銀ちゃん、トシちゃんが討ち入りとかしてる時、ニュースに敏感ネ。一切興味ありません、って顔してる癖に、私や新八が居ない時じっと見てるヨ。食い入るようにじっと見てるヨ。これホントヨ?あのオッサンも素直じゃないアル」
「・・・・」
「大分前の捕り物の時、トシちゃんお腹怪我したことあったネ?」
「・・・・・・あぁ」
「病院に入院した時ヨ。トシちゃんの前では普通にしてたかもしれない。でも銀ちゃん、脇目も振らずめっちゃ必死に走ってったアル、いい大人が顔ぐっちゃぐちゃにして真っ青だったヨ」
銀ちゃんは臆病だ。
それはそれは大切なものほど。
ほんのちょっとのことでも、それが命に係ることなら過剰な反応をしてしまう。
過去は・・・・。良くは知らない。
けれど、銀ちゃんの大切なものの中に私や新八が入っていることは何となく気づいてた。
そして、トシちゃんも。
見栄を張ってるわけじゃない。勘違いでもない。
ずっと傍にいたから感じたのだ。
ただ、大切すぎるからお互いを思いすぎて、絡まった糸みたいになってしまって。
丁寧にほどいてあげないとどんどん縺れていく。
糸が繋がる先は、どこか。
(この後は私が言うことじゃないネ)
「トシちゃん、私、銀ちゃんと仲直りして欲しいアル」
「神楽・・」
「いつものうざくてバカップルな二人が見たいヨ。今の二人、からかい甲斐ないアル」
「お前っ、からかい甲斐ってなァ!?つーかバカップルって何だバカップルって!」
「下らない喧嘩の方が見ていて皆楽しいのヨッ!」
「けど」
「自信を持つネ、トシちゃん」
「・・・・っ・・」
「さっきの言葉、そのまんまぶつけてやればいいネ」
余計なもので覆い隠さないで。
言葉が足りないのなら別の方法を探せばいい。
そのままの貴方を出せばいい。
こんなシリアスな展開、二人には似合わないから。
馬鹿みたいに喧嘩して、馬鹿みたいに笑ってる方がいいから。
エゴだと思われてもいい。
だって、トシちゃんの笑顔はみんなを私を元気にしてくれるアル。
トシちゃんの、憎まれ口を叩く顔が、鉄のような仮面じゃない、「銀ちゃんの前」での笑顔がみたいの。
「こどもだったって、いいアル」
「ちょっとくらい、甘えたって、いいアル」
暫くの沈黙が続いて。
はあ、と一つのため息が隣から聞えた。
トシちゃんはゆっくりベンチから腰を上げた。
そして何も言わずに去って行く。
(やっぱり、駄目だったのかな)
(我がまま言い過ぎたの?)
(うっとおしかった?)
(・・・もう銀ちゃんのこと、嫌いになった?)
次々と嫌な考えが頭の中に浮かぶ。
つん、と鼻が痛くなった。
目が潤む。
また隣のヘドロさんちの花粉症か何かだろうか?
太陽がまぶしいせいにして、下を向いた。
何かで濡れてしまった手をぎゅっと服でぬぐう。
「神楽」
凛とした、でも低めの芯の通ったとってもキレイな声。
はっとして前を向く。
表情は良く見えなかったけれど。
でも。
「今日はどっかの糖分天パ野郎の日らしいからよ、いつまでもぐずってられたらうっとおしいから、」
「あの馬鹿、蹴っ飛ばしてアホ面拝んでくらァ」
「・・・・トシちゃん、やっぱり素直じゃないネ」
「うるせぇ、んな簡単に性分を変えれる訳ねえだろうが」
そっぽを向きながらぶっきらぼうに呟くトシちゃんを見て、自然と口角が上がる。
鼻も痛くない。目も潤まない。
バッとベンチから跳ね置き、立ち止まったトシちゃんの横をすり抜けていく。
さて、本当は万事屋に帰ってパーティの飾り付けがしたかったんだけど。
今帰ったらお邪魔虫になりそうだ。
これからどこへ行こう。
すっかり秋らしくなってきたから焼き芋でも食べたいネ。
あのゴリラとドS野郎の住処ならお腹一杯食べれそう。
「せいぜい、銀ちゃんに抱き潰されないように気をつけろヨ!」
「なっ!」
振り向き様に、にやりと笑いながらおっきな声で叫んでやった。
それはもうご近所さまに聞えるくらい。
後ろで何か喚いてたけど、知らないフリ。
おっきな怖がり屋の可愛い可愛いプレゼントはきっとそのまま万事屋に向かうことだろう。
(後は二人で何とかするヨロシ)
いい娘を持ったことをあの天パオヤジは喜ぶがいい。
「銀ちゃん誕生日だけど、酢昆布10年分は奢って貰うアルヨ」
今日はいい日になりそうだ。
と、いうわけで終了~!
描いててとっても!楽しかったです^q^
4人とも似非キャラ過ぎてあれですけど・・
そこはあの、そっと目を瞑っていただいて・・笑
この続きはまたかきたいと思ってますvv内容忘れないうちに笑
ココまで読んで頂き有難う御座いました~vv
ちっともお祝いしてないようだけども・・・坂田本当におめでとう!
2010.10.10
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